十一番街の雨

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  • Psychological Divingへのコメント(2016年11月28日 20:26)

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    ゲーム性だけを取り出せば、RPGツクールで行う脱出ゲームといったところ。
    ただそういったゲームと大きく違う点は、グラフィックとシナリオにある。

    広いマップのその殆どは患者の心の反映であり、主人公たちはその追体験をすることになる。
    本で散らばり整理されていない廊下や、患者に冷たい言葉を浴びせる同僚やその上司。
    それらは皆彼女の心に根付いた闇であり、その混沌さはまさしく彼女の混乱と等しい。
    シナリオ面から見たマップの作りは丁寧で、こうした一つ一つの要素が彼女の心を描いている。
    個人的には背を向けると怖い顔になる同僚の姿が素晴らしいと感じた。

    こうしたマップを歩きながら、患者の心の闇を解く鍵を探していくことになる。
    なぜ患者が闇を抱くにいたったか。そしてそこから抜け出すための光となる記憶。
    演出面に力を入れたとある通り、一つ一つの鍵を取るたびに美しくも恐ろしいイベントが待っている。
    グラフィック面に力が入っているため、優しいシナリオについつい没入してしまう。
    素敵な2時間を味あわせてもらった。

    プレイ後の感触は非常にスッキリ。もしかしたら僕らが主人公を通して患者を癒やしていたように見えて、実際は僕ら自身が自分たちを癒やしていたのかもしれない。良いゲームです。


    強いて言うことがあるとすれば、謎解き要素などのゲーム面と細かい要素の作り込みか。

    謎解きは至ってシンプルで、ストーリーも基本的に一直線。
    慣れていない人に配慮した結果だろうが、短編にしてはやや広いMapもあって若干単調であった。
    難しい謎であればその分ヒントを各所に散りばめればよく、Map全体を使う謎解きであれば、クリアしたフロアに幾つか数を絞ってワープ装置を設置するなどの工夫があればよい。体力ケージも若干死んだ要素と化しており、体力減衰に直接関わるイベントが発生するタイミングではほとんど体力は減っておらず、リスクを取るか取らないかという緊迫感を出すにはさほど役立っていないように感じた。

    メインの登場人物以外のいわゆるモブキャラや、演出だけのアイテムなどにももっとセリフが欲しかった。序盤町中の老夫婦の会話が挨拶だけなのは、主人公の性格を描きこむチャンスでもあるだけに少し寂しい。一方、患者の記憶の中で本の山に触れたときの主人公たちの会話(謎解き無関係)は非常に嬉しかった。ああいうのがあるといろんなものに触りたくなるし、後半の主人公たちのセリフが説明臭くならなくて済む。

    総じて、とても素敵なゲームなので皆さんぜひやってください。